サン=テグジュペリ 母への手紙(3)

3.                フリブール、ヴィラ=サン・ジャン 1916.2.21
大切なママへ

 フランソア(アントワーヌの弟)が受け取ったばかりのあなたの手紙に、3月の始めにならないとあなたが来られないと書かれていました! ぼくたちは土曜日にあなたに会えると思って、とても楽しみにしていたんですよ!

 なぜ、遅れるんですか? ぼくたちがそれを喜ぶとでも?

 この手紙、あなたのもとには木曜に届きますね。あるいは金曜日。そしたらすぐにぼくたちに向けて電報を打てますか? あなたは来てくれると。土曜の朝には急行列車で発てると。その夜にはフリブールに着くと。ぼくたちはそれならほんとうにうれしい!

 3月の始めまであなたが来ないなんて、どれだけぼくたちを失望させることか! そんなに来たがらない理由はなんですか?
 
あなたが来てくれるものだと、ぼくたちはすごく期待しています! たとえ来られないのだとしても、そしてそれがぼくたちをすごく苦しませるとしても、この手紙を受け取ったら、すぐに電報を打ってくれませんか? 少なくとも金曜の夜までには。ぼくたちの日曜日を無駄にしないためにも。 でも、きっとあなたは来たいのですよね!

 さよなら、大切なママ。心からのキスを。あなたを待ちこがれて。

                        アントワーヌ

追伸:ぼくたちの日曜日を滅ばさぬよう、この手紙を受け取ったら即、電報を下さい。少なくとも金曜日の夜には返事が必要です。
 

ロンドンより到着。

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ロンドンの出版社から届きました。
『Sweet Bean Paste』
小説『あん』、ついに英語版の登場です。
英国では来月、米国でも11月から発売となります。
(日本でも紀伊国屋や丸善の洋書部に置かれると思います)

親しみやすく、それでいて格調高い英文。
Alison Watts さんの名訳により、
『あん』がまた新しい大地に向けて羽ばたきます。

カナダの作家、Denis Thériault さんが
裏表紙にこんなことを書いてくれています。

Durian Sukegawa teaches us that no existence is devoid of meaning, and that even the humblest of being has a valuable contribution to make to the world in which we live.
(意味なく存在するものはない。どんなにつつましやかなものも、私たちが住む世界にとって価値ある寄与をしている)

翻訳のAlison Watts さん、本当にありがとうございました。

サン=テグジュペリ 母への手紙(2)

気軽に始めたものの、当時のアントワーヌのスペルのミスまで
原書は正確に再現していると知り、これはたいへんなことになったと思っています。
たとえば以下のような例。(右側が正しい文字)

en rand → en rang
a → à
et → en
l'abéi → l'abbaye

いくら「rand」を辞書で探しても出てこないわけで、フランス人だったら「まあ。アントワーヌったら、こんな妙なスペルで書いていて可愛いわ」となるかもしれませんが、こちとらその度に立ち往生です。

<2通目>                                ル・マン 1910

ぼくの大好きなママへ

 ママにとても会いたいです。
 アネスおばちゃんはそこに一ヶ月いるんですよね。

 今日ぼくは友達のピエロとサント・クロア出身の同級生の家に行きました。
 おやつを食べて、とても楽しかったです。

 今朝は学校で聖体にお祈りしました。ママには巡礼の旅のことを話そうと思います。その日は8時15分前には学校にいなければいけませんでした。駅には列をつくって行きました。駅では、サブレ行きの列車に乗りました。サブレからは馬車に乗りました。ノートルダム・デュ・シェーヌ寺院まで五十二人以上の馬車の馭者がいるのです。

 馬車はとても長くて、生徒たちが上に乗ったり、なかに入ったりしました。それぞれ二頭の馬に引かれます。馬車はとても楽しかったです。五台の馬車のうち、真ん中の二台は小さな子たち用、他の三台は年上の生徒たち用です。

 ノートルダム・デュ・シェーヌに着くと、ぼくたちはミサに参加しました。そしてそのあと、寺院のなかで朝食をとりました。保健室の子や、7年生、8年生、9年生、10年生は馬車でソレムに行きました。ぼくは馬車で行きたくなかったので、許可を得て、1年生2年生のグループと歩いていきました。ぼくたち、二百人以上の行列になって道を完全に占領してしまいました。お昼ご飯のあとは、聖墓を観に行きました。それから神父様たちのお店に行き、いくつか買い物をしました。そして、1年生2年生とぼくとで、またソレムまで歩いて戻りました。

 ソレムに着いたあとも散歩を続けました。大修道院のすぐそばを通りかかりました。大修道院は、ただただ大きかったです。でも、ぼくたちは時間がなかったので、なかには入りませんでした。大修道院にそって、たくさんの大理石の像を見つけました。お金持ちに見えるのもあれば貧乏そうに見えるのもあります。ボクに6フランめぐんでくれたら、3フランめぐんであげるのにな。

 ひとつ、1メートル50センチと2メートルくらいの辺でできた石像がありました。そしたらみんながぼくのポケットに入れて持って帰れというのです。あんなの動かすことすらできません。とにかくすごく大きいのです。そのあとは、ソレムの草地の上でおやつを食べました。

 ぼく、もうママに八枚も書いています。

 さて、そのあと寺院の人たちに挨拶をしに行き、駅までグループで移動しました。駅に着いたら、ル・マンに戻る列車に乗りました。宿舎に帰ってきたのは夜の8時です。キリスト教の教理問答では、ぼくは5年生でした。

 ぼくの大好きなママ、さよなら。心からのキスを送ります。

                           アントワーヌ
 
 



秋のライブはこれ!

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11月4日(土)5日(日)
Eggman Tokyo Eastでの2days公演です。
題して、『星の王子さまと道化師の惑星』。
歌う道化師ユニットと、我が国が誇る最強道化師ユニットのあり得ない合体です。

アルルカン・ヴォイス・シアター(ドリアン助川+ピクルス田村)による語りと歌の『星の王子さま』をお届けするとともに、国際的に活躍する道化師ユニット『YEN TOWN FOOLS』の重要無形文化財級のパフォーマンスをご覧にいれます。この組み合わせでボクらが飲むのはともかく、公演としては、とにかく初めて! 

両日とも午後7時開演です。
予約は9月5日より、Eggman Tokyo East のホームページ(←ここをクリック)にて受け付けます。
電話で申し込む場合は 03-5829-6400 (間違えないでね)

http://www.egg-mte.com/schedule/2017/11/04002653.html
http://www.egg-mte.com/schedule/2017/11/05002654.html

今回の『星の王子さま』は背景に、サン=テグジュペリのイラストが投影されますよ!


サン=テグジュペリ 母への手紙

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今日からボクのこのサイトでは、『星の王子さま』の作者であるアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの手紙を翻訳して、お届けしようと思います。これまでのようにボクの活動の情報も混ぜていきますが、情報だけですとFacebookと変わらない構成になってしまいますので、これまでどうしようかなあとずっと考えていました。

自分の仏語の勉強もかねてです。細かいところで誤訳もあるかもしれません。大意は間違えないように努めますので、アントワーヌの人となりを味わっていただければ、訳者として幸いです。

(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 1900.6.29 〜 1944.7.31)

1.
ぼくの大好きなママへ               ル・マン 1910.6.11 (9歳)

 ぼくは万年筆を手に入れました。それでママに手紙を書きます。とてもいい感じです。
 明日はぼくの誕生日です。エマニュエルおじさんがぼくの誕生日に腕時計をくれると言いました。
 それなので、明日がぼくの誕生日だと
 (誤訳しました:近いうちにぼくの誕生日が来ると)おじさんに手紙で伝えてもらえますか?

 次の木曜日、ノートルダム・デュ・シェーヌ寺院に巡礼の旅(遠足)があります。
 学校のみんなと行きます。
 天気はとてもわるいです。ずーっと雨が降っています。
 ぼくはいただいたすべてのプレゼントをかざって、とても美しい祭壇をつくりました。さよなら。

 最愛のママ、ぼくはすごくママに会いたいです。
                           アントワーヌ

 もうすぐ、ぼくの誕生日だからね。
プロフィール

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

ライブ・公演情報
11月4日(土)5日(日)
「星の王子様と道化師の惑星」
Eggman Tokyo East
YEN TOWN FOOLsとの合同公演です。
近刊
「星の王子さま」(皓星社)
「バカボンのパパと読む老子」(角川文庫)
「バカボンのパパと読む老子 実践編」(角川文庫)
「海の子」(ポプラ文庫)
「ピンザの島」(ポプラ文庫)
「坂道 〜Les Pentes〜」(ポニーキャニオン)
「あなたという国 ニューヨーク・サン・ソウル」(新潮社)
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