原発再稼動について思うこと

これは秋田県の象潟(きさがた)の風景。
およそ三百年前、芭蕉が「奥の細道」の旅をしたときは、
松島と同じく景勝地として名を馳せていたところ。
つまり、ここは海で、点在する丘はすべて島だった。
それが、約二百年前の大地震によって
こういう風景に変わってしまった。
海底が隆起して、陸地になってしまったんだね。
もとはこの丘のひとつひとつも鳥海山の噴火によってできたもの。
ご存知の通り、日本列島は生きている陸地だ。
造山帯そのものだ。
百一年前、噴火によって陸とつながってしまった桜島のように、
どんどん姿を変えていく。
たった三百年で海が陸地に変わってしまう。
俺たちの直下ではマグマがうごめいている。
そんな場所に、たとえ廃炉したとしても
半永久的に猛毒を残してしまう原発は似合わない。
ましてや、火山の噴火を想定に入れず、
住民の避難計画も策定しないまま
「安全だ」と言い切る人たちの心が読めない。
近隣に活火山がある川内原発の再稼動は
理解できないことだらけだ。
それほどまでに安定した大量の電力が欲しいのなら、
我が国は逆にこの環境を利用し、
徹底的に地熱発電の可能性を探っていくべきだ。
マグマの上の列島なのだから、
基本的には掘れば地熱は利用できる。
原発と違って、
処理方法のわからない毒を量産していくこともないし、
いざ事故だという時に、
コントロールを失い、目に見えない恐怖にさらされることもない。
多数の労働者から働く場を失わせた原発とは対照的に、
国家的な事業になれば雇用も確保できる。
どこをどう掘っても温泉ひとつ出てこないウクライナの人が、
「日本は地熱があるからほろびない」と言っていた。
チェルノブイリで苦しんだ国の人が放つこの言葉は本当だし、
原発の対案として、俺たちはきちんと準備しておくべきだ。
問題は、開発の初期費用がかかりすぎること。
これが膨大だという。
しかし、筋道をつけるべき政治があり、
本来、国民のために使われるべき税金の正しい運用があるなら、
決して無理な話ではないだろう。
日本人は凄いと、
自画自賛の意見がほうぼうではびこっている。
それはたとえば、
列島の個性と環境を利用した新しいエネルギー体系を創造してから
初めて言ってもらいたいものだ。