fc2ブログ

サン=テグジュペリ 母への手紙(3)

3.                フリブール、ヴィラ=サン・ジャン 1916.2.21
大切なママへ

 フランソア(アントワーヌの弟)が受け取ったばかりのあなたの手紙に、3月の始めにならないとあなたが来られないと書かれていました! ぼくたちは土曜日にあなたに会えると思って、とても楽しみにしていたんですよ!

 なぜ、遅れるんですか? ぼくたちがそれを喜ぶとでも?

 この手紙、あなたのもとには木曜に届きますね。あるいは金曜日。そしたらすぐにぼくたちに向けて電報を打てますか? あなたは来てくれると。土曜の朝には急行列車で発てると。その夜にはフリブールに着くと。ぼくたちはそれならほんとうにうれしい!

 3月の始めまであなたが来ないなんて、どれだけぼくたちを失望させることか! そんなに来たがらない理由はなんですか?
 
あなたが来てくれるものだと、ぼくたちはすごく期待しています! たとえ来られないのだとしても、そしてそれがぼくたちをすごく苦しませるとしても、この手紙を受け取ったら、すぐに電報を打ってくれませんか? 少なくとも金曜の夜までには。ぼくたちの日曜日を無駄にしないためにも。 でも、きっとあなたは来たいのですよね!

 さよなら、大切なママ。心からのキスを。あなたを待ちこがれて。

                        アントワーヌ

追伸:ぼくたちの日曜日を滅ばさぬよう、この手紙を受け取ったら即、電報を下さい。少なくとも金曜日の夜には返事が必要です。
 

コメントの投稿

非公開コメント

惑星

団長に相談した結果、土曜日ではなく日曜日に行くことにしました。

つれないママ!

9歳にして、すでに情熱的な手紙が書けるアントワーヌくん。ママ、ちょっと冷たすぎです。ああ、男の子って....。

ももさんへの返信

このとき、アントワーヌ君は15歳です。下の弟さんが亡くなる予感のなかで、強烈に母親を求めていたのかもしれませんね。

惑星さんへの返信

その方がいいかも。日曜がらがらだよ〜。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール
作家・歌手・明治学院大学国際学部教授

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

近刊
「寂しさから290円儲ける方法」(産業編集センター)
(2023年5月23日刊行予定)
「動物哲学物語」(集英社)
(2023年10月26日刊行予定)
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ