テディ・パパヴラミがやってくる!

アルバニア出身の世界的ヴァイオリニスト
テディ・パパブラミが来日します。
まずはテディが自ら綴った波乱の半生
『ひとりヴァイオリンをめぐるフーガ』(山内由紀子訳)の紹介。
ソビエト連邦やユーゴスラビアを仮想敵国とみなし、中国とも国交を絶っていた超絶孤独な共産主義国家アルバニア。四十年以上続いたエンヴェル・ホッジャの独裁により、経済は完全崩壊します。ヨーロッパ最貧国と化したその鎖国の地で、ヴァイオリン教師を父に、階級闘争の対象ともなりえるブルジョアジーの子としてテディは生まれます。
父親の厳しいレッスンと鉄拳制裁、それに耐えながらも力を抜くことを覚えるテディ。環境的にも内面的にも不安定な時間のなかで、幼きテディはヴァイオリニストとしての道を歩み始めます。しかし、祖国での活動は限られており、骨身にしみて未来なき未来を知る父親とともに、茫々たる荒野を見つめるばかり。
そんなとき、演奏旅行でアルバニアを訪れたフルート奏者に才能を見いだされ、フランス政府から奨学金を受けることが決定。テディは11才で渡仏します。アルバニア大使館の監視下に置かれる生活ですが、異国の地で多国籍のミュージシャンたちと知り合い、テディの音楽性や表現力の根はどんどん太く、強くなっていきます。ソリストとしての活動の場も増え、ついに輝かしい未来が見え始めたテディ。ところがそこで、祖国アルバニアから帰国命令が下ります。やがてこれが父親と母親を巻き込んだ政治亡命へと転じ、アルバニアの親族はみな強制労働所送りに・・・。
希有な半生を綴った自伝であるとともに、これはまぎれもなく、「求めている人」にとって読み応えのある文芸作品です。溢れるばかりの文才もあるテディ。アルバニアを代表する作家イスマイル・カダレの作品を10冊以上フランス語訳しており、その技術をもって、自身の内面に起きたことをリアリティを失わずに伝えてくれています。独裁政権化の人の心について、初恋について、父親との葛藤について、その父親の悲しみについて、母親の忍苦について、そして生涯を終えんとする祖父が残した言葉について。
この分厚い本。翻訳の山内由紀子さんは等質感を保ったまま、決して難しさをまとわずに、テディの息吹を身近な日本語で再現してくれています。表現とは何なのか? 技術とは何なのか? テディの苦しみはボクらの苦しみでもあり、その迷路はボクらが突破すべきダンジョンでもあります。励ましになる頁がずいぶんありました。
ただ、この本、高いです。版元は藤原書店なので、ああ、もう、これはそうなのね、と頷くしかないのですが、なんと税抜き4600円。音楽を始め、技術を磨かなければいけない表現者なら二食抜いても入手すべきですが、そうではないと思われる人は図書館に買ってもらうのがいいかも。(でもなあ、飲み代なら平気で5000円使えるのに、書籍だと急に渋くなるというのは、人生に於いては本末転倒ですよね)
そして特報。
ヴォイオリニスト、テディ・パパブラミが東京にやってきます。
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017」
公演番号312とか316とか、全部で5回ステージに立つみたい。
公式サイト
http://www.lfj.jp/lfj_2017/
プログラム
http://www.lfj.jp/lfj_2017/performance/pdf/LFJ2017_timetable_PDF_170214.pdf
読んでからテディに会いに行くか。会って聴いてからテディを読むか。
5月4日、5日、6日、東京国際フォーラムです。