だれの命も。

本当のビッグ・バンは君が生まれたときなんだ。
君が今、意識している世界。
もちろん、君の生まれる前からあったけれど、
君が今、意識している宇宙。
それは君とともに生まれたのだ。
雨も風も、この梅雨明けの光も、
蝉の声も、空も川も海も、
君の親ですら、君の誕生とともに開闢した。
だって、世界は君の誕生を待っていた。
君に見てもらいたいと思った。
君に聞いてもらいたいと思った。
君に感じてもらいたいと思った。
この意味において、
だれもが等しく世界と関係している。
どんなにみじめに見える人も、
難病と闘っている人も、
お金のない、家のない人も、
ベッドから起き上がることができない人も、
言葉を発することができない人も、
みな、この宇宙を、
それぞれのやり方で意識している。
人間社会なんて、とても狭義なもので、
本来の命は、数字や勝ち負けで表せるほど浅いものではない。
社会において有能かどうかなんて、
ナナフシの翅の輝きにもかなわない。
みんな、この宇宙が欲しかった命。
一点の開闢から百五十億年。
圧倒的な存在が欲した、君という命。
殺していい命なんて、どこにもない。