ライブの構成を変えます。

ダッカのテロ事件、気持ちがふさぎます。
イスタンブールであんなことがあったばかりなのに。
こういう形で日本人にも犠牲者が現れ始めると、
一気に世論が硬直しそうで、そのこともまた恐れます。
パリでの講演。隠れたテーマは「共生」でした。
講演をすることになったきっかけは、フランス在住のサックスプレイヤー、麻紀さんから声をかけていただいたことです。ちょうどパリでたいへんなテロが起きたあとで、ボクはこのfacebookや自分のサイトで、リヨンの高校のそばで見かけた『Je t'aime.』というらくがきをアップしました。どんなことが起きても、少なくとも自分たちはこの気持ちを忘れないでいようと。きっと麻紀さんはそのときのボクの文章を読んでくれたのだと思います。
今回、パリに持っていった本のなかに『ぼくは君たちを憎まないことにした』(ポプラ社)がありました。あのパリのテロで最愛の奥さんを失い、生後17ヶ月の息子さんと二人きりになってしまったアントワーヌ・レリスさんの手記です。
テロリストたちに対し、レリスさんは語ります。
が目的なのかもしれないが、憎悪に怒りで応じることは、君たちと同じ無知に陥ることになるから。君たちはぼくが恐怖を抱き、他人を疑いの目で見、安全のために自由を犠牲にすることを望んでいる。でも、君たちの負けだ。ぼくたちは今まで通りの暮らしを続ける』
この言葉を、しかしレリスさんは簡単に記したわけではありません。奥さんを亡くした衝撃が彼の生気を奪っていくのが文面から良くわかります。でも、小さな息子がそばにいるから、彼は絶望のなかで溺れるわけにはいかなかったのです。そして、妻の幻影と手を取り合い生きていくためにも、そこに憎悪を持ち込んで時を汚していくことができなかったのです。
「憎しみは憎しみしか生まない」という典型的な言葉を、条件反射的に彼につぶやくことはできません。「そうだよね。だからあなたの気持ちはわかるよ」などと。それはできません。レリスさんはおそらく、人類の極限までの心の彷徨を短時間のうちに行い、そしてひとつの島として「君たちのほしがる憎悪はあげない」という結論に達したのでしょう。
さて、今月9日(土)のアルルカン・ヴォイス・シアターのライブの内容を変更します。当初「新作ライブ」と銘打っていましたが、フランスでの体験をメーンで伝え、このレリスさんの言葉も等しく紹介したいと思います。ブルターニュやパリで考えたこと、感じたこと、「共生」とは何か。半分フランス語となった「クロコダイルの恋」や「坂道 ~Les Pentes~」を紹介するとともに、人としての詩をちりばめられればと思っています。
それから、4月以降のライブから続けてきた熊本大地震への募金ですが、この9日のライブをもって終了とし、全額を熊本県立盲学校に送らせてもらいます。1000回を越える余震のなか、大人たちもみな具合が悪くなったというときに、全盲の子供たちはどうやって耐えたのだろう。ここの学校にはアンサンブル部があります。楽器のひとつでも買っていただければ、という思いからです。
ライブ会場は東京岩本町のEggman Tokyo East です。
9日(土)午後6時半開演
予約は、03-5829-6400 です。詳しくは egg-mte.com をご覧下さい。