10の奇妙な話。

田内志文さんの最新訳「10の奇妙な話」(東京創元社)を読みました。
ミック・ジャクソンの短編集「The Sorry Tales」(哀れな物語)の邦訳です。
かつて、ブッシュ政権の好戦性に叛旗をひるがえすため、
ボクが「敗北からの創作」(幻冬舎)という本を出したとき、
雑誌PENの書評欄でとりあげてくれたのが志文さんでした。
(普段は志文ちゃんと呼んでいます)
それ以来の仲なのですが、
ボクと志文さんには共通の夢があって、
たとえばこのミック・ジャクソンやエイミー・ベンダー(管啓次郎さんが訳されています)など、なんともいえず不思議な香りがするもの、映画で言えばティム・バートン(「チャーリーとチョコレート工場」とか)風のものを書いてみたい、作風としたいという思いがあるのです。
日本の作家では、いしいしんじさんでしょうか。
現段階で、ボクはその夢に近付けていません。
書かねばならない、と思っているテーマが幾つかあり、
それをクリアしたところで冒険に出ようと思っているのですが、
志文さんは「フランケンシュタイン」や「吸血鬼ドラキュラ」などの大物を訳したあとで、
みごとにこの道を進み始めました。
非常に嫉妬があります。
とはいえ、面白かったなあ。
蝶の修理屋を志し、古物店で見つけた手術道具を使って博物館の標本の蝶を蘇らせようとする少年の話。掘り出した骨を集めてネックレスをつくる穴堀り大好き少女。金持ち夫婦にやとわれ隠者となった男の顛末。どの短篇も想像がつかない結末へと向かいます。
ルイース・キャロルが実の娘のために「不思議の国のアリス」を書いたように、英国人にはこの種のキレキレな物語を増産する才能があるような気も・・・。
読んで、笑って、焦ります。