過ぎし日を振り返りつつ(2)

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「商機」

父さん ポル・ポトが橋を爆破しました
退却しながらの攻撃というやつで、ダイナマイトが炸裂
橋の真ん中が吹き飛んで、もう誰も渡れやしません
棒高跳びの選手が棒を突いても、
サーカスのオートバイ乗りがエンジンをふかしても、これはもう無理というものです
父さん 商売をしましょう メコンを渡れない人がたくさんいます
ジープやトラックも護岸に溜まるばかり
ちょいと遠回りして、我らのトラクターで浅瀬を引っ張ってやりましょう
自転車やオートバイなら1ドル トラックなら10ドルはとれます
父さん メコンで商売をしましょう
困っている人がいるんだから 助けてあげないと

それにしても父さん 
橋は真ん中がなくなると橋ではなくなるのですね
では、ここからも大きく見えるあの橋、あの橋の残骸をなんと呼べばいいのでしょう
つまり父さん
なにかがなくなると、元の名前は消えてしまうのですね

それなら、道はなにがなくなると、道ではなくなるのですか
虹はなにがなくなると、虹ではなくなるのですか
人はなにがなくなると、人ではなくなるのですか

父さん メコンで商売なんてこれまで考えたこともなかった
そんなことを思いついたのは
なにかを得たのですか それともなにかをなくしたのですか

橋が橋ではなくなった今 ボクもボクではなくなりました
父さん さあ メコンで商売をしましょう


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人はなにがなくなると、人ではなくなるんですか

物はその用をなさなければ、その物ではなくなる

人は…

何かのためにあるのではないから

目的のために存在するのではなく、存在すること自体が目的であるならば

他の存在を否定したとき、人は人ではなくなるのかもしれませんね

心にまっすぐに問いかけられ
思わず立ち止まりました

ドリさんありがとう

うらのかお

破壊が戦争の表の顔なら、商機はその裏の顔ですね。このころといまと、ドリアンさんの気持ちはどう変わったんだろう、どう変わらないんだろう。などと考えました。

ドリアンさんの詩を、ただ、受け身で拝読していましたが、キキさんの「存在すること自体が目的であるならば 他の存在を否定したとき 人は人でなくなるのかもしれませんね」というコメを見た瞬間、心の奥に詩が、突き刺さりました。
残念ながら神様は、身の回りの現象の全て、残酷な現実をも肯定する存在です。
自分にもそれが、賛同でも憎しみでもなく、自然に肯定が出来、神様と同じ目線になれた時、周りの景色全てが一変するのだろうと思います。

チャンス

最後の二行が切ないけれど、ここから「ボク」は新たに大人の階段をたくましく歩み始めるということだと思います。

神様は大きなチャンスを「ボク」に与えている。むきだしの生きる力、生き抜く力を養い、魂という点でも、ポル・ポトを超える日が来るでしょう。

キキさんへの返信

人である自分にとって、
なにが大事なことだろうと考えるのは、
それこそとても大切なことだと思います。
「人として」という言葉はあまりに紋切り型ですが、
自分のなかに指針を持つことは、
生き方を楽にする方法のひとつでもありますね。

ももんがさんへの返信

変わったところは大いにあるし、
変わらないところも大いにあります。
いつもお腹が減っていて、
なにを食べてもおいしい。
これは変わっていないです。

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キキさんへの返信

生き方を楽にする。
方法があるわけではなくて、
あがいたあとはひたすら達観、
という感じかもしれません。
でも、一応はみっともないくらいあがきます。
プロフィール

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

ライブ・公演情報
11月4日(土)5日(日)
「星の王子様と道化師の惑星」
Eggman Tokyo East
YEN TOWN FOOLsとの合同公演です。
近刊
「星の王子さま」(皓星社)
「バカボンのパパと読む老子」(角川文庫)
「バカボンのパパと読む老子 実践編」(角川文庫)
「海の子」(ポプラ文庫)
「ピンザの島」(ポプラ文庫)
「坂道 〜Les Pentes〜」(ポニーキャニオン)
「あなたという国 ニューヨーク・サン・ソウル」(新潮社)
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