絶版となっていた2冊の本がよみがえりました。

絶版となっていたボクの本が2冊、今日、電子書籍としてよみがえりました。双方ともに、「明川哲也」という別のペンネームで書いたもので、刊行は10年以上前になります。
『ジョンを背負って7000メートル』
これは、実体験が元になっている小説です。1990年12月8日、テレビ朝日でジョン・レノンの追悼特番を作りました。構成作家として関わった番組です。スタジオセットとして、ボクの体がすっかり隠れてしまうほどの巨大なジョンの写真パネルを製作したのですが、放送終了後に廃棄処分されると聞き、12月9日、たった一人で(しかも素手で)、このパネルを六本木から新宿ゴールデン街まで徒歩で運びました。ゴールデン街のある店が、雨漏り対策として店の天井にしたいと言ってくれたからです。
いや〜、これが大変な旅になりました。なんと、途中で木枯らし1号が吹き出し、手は血だらけです。しかも、ヤクザに蹴られ、7時間かけて新宿に辿り着いたらいきなりの雨です。紙の写真なのに!
その過酷な旅のあれこれを柱に、生きることを巡る男女の切ない恋の物語を書きました。他にも『ナッツ』(新宿のデブ専風俗で働く女性と、なかなか困窮状態から這い上がれない男の爽やかな青春小説)など、計3話で1冊の本となっています。
電子版の表紙は、2015年にマルセイユを訪れた際撮ったものです。長い階段を上っていくような我らの日々に乾杯。
『ジョンを背負って7000メートル』 https://bookwalker.jp/de011b46e1-f1f8-4186-a4ea-d74763548b5c/
『星の降る町 六甲山の奇跡』
兵庫県芦屋市を舞台に、万引き癖のある少年と、老ケーキ職人のちょっと変わった交流を書きました。当初は、日本版の『ライ麦畑でつかまえて』を書こうなどという野心があったのですが、あんな性格のわるい少年は書き切ることができず、気づけば、「イマジネーションとはなんぞや?」をお題としたファンタジー小説が生まれていました。
ただ、背景にあるのは阪神大空襲です。子供を失い、ケーキを作り続けた職人の人生です。ケーキがたくさん出てくるけれど、甘いだけの話ではないよ。
電子版の表紙のこのオブジェは、ピーナッツを12色のアクリル絵の具で彩色したものです。気が遠くなりそうな作業でしたが、ボクはこのカラフルナッツを気に入っています。
『星の降る町 六甲山の奇跡』 https://bookwalker.jp/de9e8eae91-c1b6-40f0-bd61-138d55411481/