FC2ブログ

花アブ

一月のきんかんの鉢植え。
その硬い葉に、小さな花アブがとまっている。
わずかな日だまりの底で
生命のしずくとして、ただじっと感じている。

この子がデザインされたのははるか大昔のことで、
その創造の意志はもっともっと太古のことで、
でも今、時期を間違えて出てきてしまった花アブは
花さえないこの一瞬を、
たった一度のおのれの生として味わう。

陽が暮れれば、冷気はこの子を包むだろう。
命の、燐光のような炎も
きっとそこで果てるだろう。
だが、まがうことなき生が
きんかんの葉の上で、今を感じている。
プロフィール

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

ライブ・公演情報
2019年8月21日(水)
名古屋栄
Doxy
近刊
「水辺のブッダ」(小学館)
「新宿の猫」(ポプラ社)
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ