花アブ

一月のきんかんの鉢植え。
その硬い葉に、小さな花アブがとまっている。
わずかな日だまりの底で
生命のしずくとして、ただじっと感じている。

この子がデザインされたのははるか大昔のことで、
その創造の意志はもっともっと太古のことで、
でも今、時期を間違えて出てきてしまった花アブは
花さえないこの一瞬を、
たった一度のおのれの生として味わう。

陽が暮れれば、冷気はこの子を包むだろう。
命の、燐光のような炎も
きっとそこで果てるだろう。
だが、まがうことなき生が
きんかんの葉の上で、今を感じている。
プロフィール

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

ライブ・公演情報
7月23日(日)
まちジャム
多磨全生園

7月29日(土)30日(日)
星の王子さまミュージアム(箱根)
近刊
「星の王子さま」(皓星社)
「バカボンのパパと読む老子」(角川文庫)
「バカボンのパパと読む老子 実践編」(角川文庫)
「海の子」(ポプラ文庫)
「ピンザの島」(ポプラ文庫)
「坂道 〜Les Pentes〜」(ポニーキャニオン)
「あなたという国 ニューヨーク・サン・ソウル」(新潮社)
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