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海の子

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新刊『海の子』(ポプラ文庫)の紹介をさせてください。
海釣りと魚料理の醍醐味、一匹の魚の味に秘められた人間模様を中編四話に仕上げています。

八年前、単行本『花鯛』(文藝春秋)として出させていただいた一冊です。現在の力で(成長したのか劣化したのかはともかく)、それぞれの物語をブラッシュアップしました。第一話の『花鯛」は結末が変わっています。

二十代から三十代にかけて、ボクは海釣りと魚料理に入れあげました。今は小坪の鮎丸という船に年に一度乗るかどうかの書斎フィッシャーマンになってしまいましたが、休日とあらば海に出ていた頃の情熱がこの四編の物語『花鯛』『オニカサゴ』『寒平目』『甘鯛』に昇華しました。

秋の夜長、燗などつけつつ、海釣り小説はいかがでしょう。

こんなことって・・・

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こんなことがあるんだろうかと、今日はホロリと、視界が霞みました。
中国から帰ってきたら、11年間使ってきた Macが起動しない状態になっていました。
なにをやっても、もう目を覚ましてくれないのです。
しかたない。11年ですから、寿命ですね。

外付けハードディスクで本の原稿などはバックアップしていましたが、
およそ6000点ほどの写真がアウト。音楽もアウト。
なんとかデータの取り出しを願い、今日パソコンショップに行ったのです。
小説の締め切りも迫っているので、新しいMacも買いました。

それで・・・これまで使ってきたMacは分解します、とのこと。
長年触ってきたキーボードもゴミとして運ばれていきました。
相手は機械ですが、いったいどれだけの作品をこのMacで生み出してきたのだろうと考え、感無量になりました。

なんといっても、11回書き直した「あん」です。
迷路のようになってしまった作品がシンプルになるまで、
3年もの間よくぞ耐えてくれたMacです。分解され、壊されるMacに向けて、
ボクはそっと「ありがとう。これまで」と念じたのです。

そうしたらね。
こんなことってあるんだろうか。
パソコンショップで流れていたうるさい音楽(たぶん有線)が、突然この曲に変わったのです。
聞き覚えのあるあの澄んだ歌声が胸をつかみました。

「水彩の月」(秦基博)
そう。映画「あん」のために秦さんが書き下ろした曲です。
エンディングで流れていたあの曲。

「ねえ もしも 君にもう一度 会えるとしたら
うまく言えるかな

いつかと 同じ 水彩の月の下でも
また その横顔 見てるだけかな

話せなかったことがたくさんあるんだ
言葉じゃ足りなくて
僕は君へのこの想いにかわる明日を
あてもなく 空に 探しているよ」

相手は、機械です。
でも、11年間毎日いっしょにいた友でした。
それが・・・壊されてしまう最後の瞬間に・・・
何かお互いに通い合ったような気がしたのです。

パソコンショップの店内が滲んで仕方なかった。
ありがとう。貧しき日々をずっと支えてくれたi-mac5。

蟹の城

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蘇州訪問から上海に戻る途中、上海蟹の名産地だという陽澄湖に寄りました。
なんと、写真でご覧になれるすべての建物が上海蟹のレストランです。
しかもこれらのレストラン、すべて鰻の寝床のような構造になっていまして、
廊下がずーっと続く長大なつくりなのです。
それがこれだけぎっしり。

この日は台風直撃で猛烈な雨でした。
でも、駐車場は暗くなる前からいっぱい。
中国の人たちの食にかける熱意は凄まじいものがあります。

で、肝心の上海蟹はどうだったかというと・・・
まあ、これはこれ。
味噌が豊富なモズクガニですね。
でもやはり、毛ガニや松葉ガニの方がはるかにうまいかな。
比べるものではないのだろうけれど。

ただし、上海蟹の味噌をつまみにいただく白酒(パイチュウ)。
これは絶品でした。

北京大学を訪れました。

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国際ペンクラブの交流の一環として、中国を訪れました。
ボクにとっては初めての中国。初めての北京です。
ある一日は北京大学の大学院を訪れ、日本文学専攻のみなさんと向かい合いました。
みなさんとても奇麗な日本語を話されます。

日本と中国の間にある意識の壁。
こちらからは「なにがあなたたちにとって精神的タブーになるのか」といった問いかけ。
「あん」に於けるタブーと、タブーを破るための一部の暴力の間にはどんな差異があるのか。
あるいは「なにを読んだらいいのかわからない」という苦悩も聞こえてきて・・・

イデオロギーの差はあれど、
言葉を交わすうちにどんどん笑顔が増えていく中国の若者たちと日本のおじさんたちなのでした。

もっと長く、話したかったな。

麻紀さん、本を出す!

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こんちは。ドリです。
世界を旅するサックス奏者、仲野麻紀さんが本を出されました。
その名もズバリ『旅する音楽』(せりか書房)

フランス滞在中、むちゃくちゃお世話になった麻紀さん。
麻紀さんがいらっしゃらなければ、
「あん」に関するパリでの講演は実現しませんでした。

2002年に渡仏されてからこれまで。
旅という生き方のなかで、その空気を、息吹を、生滅を音に変え、
音楽を通じてこの星と呼吸を合わせていらした麻紀さん。

一頁めくる度に、
麻紀さんの感覚と思慮、そしてこの星で今同時に生きる者たちの音楽以前の脈動、脈動以上の音楽が聞こえてきます。
壮大な青春記であり、繊細で大胆な藝術論であり、
旅と音楽という現場を持つ人間の言葉集でもあります。

旅の意味を考えてらっしゃる方、
音楽その他の表現者として生きていこうとされている方、
今一度この人生をとらえ直してみたいという方、
ぜひご一読ください。

ウードギター奏者のヤンさんと、麻紀さんは「ky」というユニットを組んでらっしゃいます。
今、まさに二人のジャパンツアーが始まったばかりです。

10月7日(金)滝川 興禅寺
10月8日(土)紋別 ヨガカフェ・オルオル
10月9日(日) 網走市役所北コミュニティセンタ
10月10日(月)余市 余市テラス
10月14日(金)秋田公立美術大学
       café pour deux
10月15日(土)潟上 たそがれファーム収穫祭
10月16日(日)小田原 うつわ菜の花
10月17日(月)那覇 Le gombo
10月21日(金)長岡 gallary mu-an
10月22日(土)新潟県政会館
10月24日(月)下北沢 B&B  ゲスト ドリアン助川
10月25日(火)名古屋 天白小劇場
10月27日(木)名古屋 feel art zero
10月28日(金)四日市 tabelna ohno
10月29日(土)京都 rondokreanto
10月30日(日)天橋立 玄妙庵カフェ
11月1日(火)尾道 ハライソカフェ
11月2日(水)尾道交流センター
11月3日(木)高根 パラディーソ
11月4日(金)牛窓 てれやcafe
11月5日(土)東京 求道会館
11月6日(日)河口湖Jazz Festival
詳しくは contact@openmusic.jp.net
    http://kyweb.fr

それと、今月24日の下北沢B&Bは、「旅と音楽」について、麻紀さんとボクのトークショーがあります。進行は詩人の管啓次郎さんです。そのあと、「ky」のミニライブとなりますので、みなさんぜひいらして下さい。

http://bookandbeer.com/event/20161024_tabi_ongaku/
プロフィール
作家・歌手・明治学院大学国際学部教授

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

近刊
「寂しさから290円儲ける方法」(産業編集センター)
(2023年5月23日刊行予定)
「動物哲学物語」(集英社)
(2023年10月26日刊行予定)
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