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だれの命も。

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本当のビッグ・バンは君が生まれたときなんだ。
君が今、意識している世界。
もちろん、君の生まれる前からあったけれど、
君が今、意識している宇宙。
それは君とともに生まれたのだ。

雨も風も、この梅雨明けの光も、
蝉の声も、空も川も海も、
君の親ですら、君の誕生とともに開闢した。

だって、世界は君の誕生を待っていた。
君に見てもらいたいと思った。
君に聞いてもらいたいと思った。
君に感じてもらいたいと思った。

この意味において、
だれもが等しく世界と関係している。
どんなにみじめに見える人も、
難病と闘っている人も、
お金のない、家のない人も、
ベッドから起き上がることができない人も、
言葉を発することができない人も、
みな、この宇宙を、
それぞれのやり方で意識している。

人間社会なんて、とても狭義なもので、
本来の命は、数字や勝ち負けで表せるほど浅いものではない。
社会において有能かどうかなんて、
ナナフシの翅の輝きにもかなわない。

みんな、この宇宙が欲しかった命。
一点の開闢から百五十億年。
圧倒的な存在が欲した、君という命。
殺していい命なんて、どこにもない。

くまもんに配達してもらいました。

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会計報告いたします。
本日、熊本県立盲学校 学校長様あてに、
みなさんからのお気持ち、
計315, 016円、 切り上げて計320,000円を
義援金として送らせていただきました。


4月22日 新井高子さんとの朗読会 @青山スパイラルルーム
5月15日 ピースリーディング(大島葉子、きりばやしひろきと共に)@ Eggman Tokyo East
5月28日 写真展「坂道」ライブ @ ART+EAT
6月 3日  写真展「坂道」ライブ @ ART+EAT
6月11日 那須 豊穣庵でのライブ2回
7月 9日 フランス大報告会ライブ@ Eggman Tokyo East
以上、計7回のライブ、朗読会会場に義援金箱を置かせていただきました。


余震が1000回を越え、大人でも具合がわるくなる人が続出するなか、視力を失った子供たちはどんな思いで耐えているのだろう、というところから発した募金でした。ライブのお客様、出演者、関係者のみなさんからお気持ちをいただき、この額に達しました。ありがとうございました。


なお、昨日、朗読劇「あん」の熊本市での公演が決まりました。12月4日(日曜日)です。出演は中井貴惠さんと私、ギターはピクルス田村です。


写真のくまもんは、ライブを終えて募金箱を開ける度に入っていたものです。このなかにお金を包んで下さったあなたもありがとう。みなさん、ほんとうにありがとう。

選挙だね。

アリスンさんと_convert_20160707093906

機嫌がわるくても、お腹が減っていても、
失恋しても、二日酔いでも、選挙には行きましょうね。
それぞれの信条で一票を投じましょう。
意見が違ってぶつかりあっても、
互いのことをボロクソに言い合っても、
一票を投じ合うなら、民主主義は機能します。

でも、誰選んでもいっしょじゃん、とか
政府の言う通りにやってればいいんだよ、といった姿勢で、
あなたの投票権をどこかに捨ててしまうと、
そこから怪しげな雲がわいてきます。

もしも何割かの人々の投票権(人権でもあります)がこの怪しげな雲に変わってしまうと、
こいつはブラックホールとなり、
まっとうに政治をやろうとする人々の意志を飲む込み深淵や、
権力者によって利用しやすい暴虐の風の噴き出し口になったりします。

棄権という名のブラックホールは、
一見投げやりな人々の、絶対ゼロ度の非エネルギー体として映るものです。
しかし、問答無用の暗殺も、原子爆弾のカタストロフも、
入り口はここにありました。
独裁に傾く人々がここを呼吸の場とするとき、
絶対ゼロ度は、人を焼き払う魔の熱線にも変わります。

だから、どんな意見を持つ人であれ、
選挙には行きましょう。
まず、民主主義をシステムとして機能させましょう。
気味の悪い深淵がそばに口をあけるこの風景を眺めながら。

実際の政治は、金と力のぶつかり合いですから、たいへん泥臭く、また血なまぐさい部分もあるでしょう。
大国が覇権主義で圧力をかけてきたり、民が飢えているのにミサイルを試射しまくっている気のふれた王国があれば、不安な気持ちになるのは自然な感情です。

でも、だからといって、「抑止力」という名の際限のない軍拡競争に加わってしまえば、ともに負のスパイラルに入り込んでいくのは歴史が示している通りです。ここに入り込んでいって、かつて穏やかでいられ続けた国があったでしょうか。

これはボクの個人的な意見ですが、日本という地域に住む我らは、文化文明の点で、まだまだやれることがたくさんあると思います。
山中医師のように、難病で苦しむ人々のため、細胞の研究に人生をかけている人がいます。小津や黒澤、そして河瀬監督まで、映画で魅了する人々。漫画の台頭は本当に顕著で、どれだけ多くの国でONE PIECE が読まれていることでしょう。村上春樹さんもそうですね。日本食も大人気です。また、原発事故から、次の世代のエネルギーについて思考する人々が増えたことも事実です。現実に世界では原発が頭打ち状態になっているのですから、開拓に値する平原は目の前にあるのです。

海外で出会った「日本が好きだ」と話しかけてくる人々は、みなその理由に日本の文化をあげました。これはとても肝心なことです。
きめ細やかで、ユーモアがあって、無尽蔵ともとれる豊かな文化文明を築いていくこと。それこそが「抑止力」なのだとボクは思います。なぜなら人類にとって、その進捗への手応えこそが必要だからです。日本に住む人々の文化文明が世界の人々にとっても本当に大切なものになっていくこと。長い目で見れば、それがつまらぬスパイラルを遠ざける「抑止力」になるのです。

もちろん、あらゆる時代に不条理は起きます。その地域のために貢献しようとした人が過激派に命を奪われたりすること。どうにも説明のつかない悲劇も起きえます。過去の歴史を例にとり、豊かな文化文明を築いたところで隣国から侵略されたらおしまいではないかと考える人もいるでしょう。しかし、まさにその歴史が証拠となるように、その企ては長くは続きませんし、果てに迎えるものは必然の破滅です。

人類から自由意志を切り離すことはできず、その花と果実は文化文明にこそあります。理想だろう、と言われやすいことをボクは言っているのかもしれませんが、人類の糧の半分はこの理想というものでした。

さて、写真は、先月に那須の農園、豊穣庵のお堂で行ったライブ後の一枚です。小説「あん」の英国版を翻訳して下さっているアリスンさんが一人で車を運転されて、観に来て下さいました。アリスンさんはオーストラリア出身です。これから、日本人であるボクと、オーストラリアのアリスンさんと、英国の編集者のみなさんとで力を合わせて、英語の「あん」を出版します。これが「抑止力」を越えた「協調力」です。

そうそう。この日を境に、ボクは道化師のメイクをやめました。メイクなしでも、もう充分に道化師であることに気付いたからです。明後日のEggman Tokyo East でのライブも素顔で歌います。

ごちゃごちゃお前うるさいよ、という方も、お願いですから選挙に行きましょう。意見は違って当たり前。まずは民主主義を機能させましょう。

ライブの構成を変えます。

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ダッカのテロ事件、気持ちがふさぎます。
イスタンブールであんなことがあったばかりなのに。
こういう形で日本人にも犠牲者が現れ始めると、
一気に世論が硬直しそうで、そのこともまた恐れます。

パリでの講演。隠れたテーマは「共生」でした。
講演をすることになったきっかけは、フランス在住のサックスプレイヤー、麻紀さんから声をかけていただいたことです。ちょうどパリでたいへんなテロが起きたあとで、ボクはこのfacebookや自分のサイトで、リヨンの高校のそばで見かけた『Je t'aime.』というらくがきをアップしました。どんなことが起きても、少なくとも自分たちはこの気持ちを忘れないでいようと。きっと麻紀さんはそのときのボクの文章を読んでくれたのだと思います。

今回、パリに持っていった本のなかに『ぼくは君たちを憎まないことにした』(ポプラ社)がありました。あのパリのテロで最愛の奥さんを失い、生後17ヶ月の息子さんと二人きりになってしまったアントワーヌ・レリスさんの手記です。
テロリストたちに対し、レリスさんは語ります。

が目的なのかもしれないが、憎悪に怒りで応じることは、君たちと同じ無知に陥ることになるから。君たちはぼくが恐怖を抱き、他人を疑いの目で見、安全のために自由を犠牲にすることを望んでいる。でも、君たちの負けだ。ぼくたちは今まで通りの暮らしを続ける』

この言葉を、しかしレリスさんは簡単に記したわけではありません。奥さんを亡くした衝撃が彼の生気を奪っていくのが文面から良くわかります。でも、小さな息子がそばにいるから、彼は絶望のなかで溺れるわけにはいかなかったのです。そして、妻の幻影と手を取り合い生きていくためにも、そこに憎悪を持ち込んで時を汚していくことができなかったのです。

「憎しみは憎しみしか生まない」という典型的な言葉を、条件反射的に彼につぶやくことはできません。「そうだよね。だからあなたの気持ちはわかるよ」などと。それはできません。レリスさんはおそらく、人類の極限までの心の彷徨を短時間のうちに行い、そしてひとつの島として「君たちのほしがる憎悪はあげない」という結論に達したのでしょう。

さて、今月9日(土)のアルルカン・ヴォイス・シアターのライブの内容を変更します。当初「新作ライブ」と銘打っていましたが、フランスでの体験をメーンで伝え、このレリスさんの言葉も等しく紹介したいと思います。ブルターニュやパリで考えたこと、感じたこと、「共生」とは何か。半分フランス語となった「クロコダイルの恋」や「坂道 ~Les Pentes~」を紹介するとともに、人としての詩をちりばめられればと思っています。

それから、4月以降のライブから続けてきた熊本大地震への募金ですが、この9日のライブをもって終了とし、全額を熊本県立盲学校に送らせてもらいます。1000回を越える余震のなか、大人たちもみな具合が悪くなったというときに、全盲の子供たちはどうやって耐えたのだろう。ここの学校にはアンサンブル部があります。楽器のひとつでも買っていただければ、という思いからです。

ライブ会場は東京岩本町のEggman Tokyo East です。
9日(土)午後6時半開演
予約は、03-5829-6400 です。詳しくは egg-mte.com をご覧下さい。
プロフィール
作家・歌手・明治学院大学国際学部教授

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

ライブ・公演情報
2021年12月
24日&25日
『新宿の猫』
菊川なぁ〜じゅ
近刊
「水辺のブッダ」(小学館)
「新宿の猫」(ポプラ社)
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