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「坂道 Les Pentes」

坂道表紙_convert_20160328203823

初の長編詩写真集「坂道 Les Pentes」(ポニーキャニオン)を上梓します。
オールカラーの写真集で、詩は日本語、英語、フランス語の3言語併記。
そして、ボクの朗読以外にも、ネイティブによる英語とフランス語の朗読が入ったCD(60分)がつきます。

この数年間は、旅先の南フランスとイタリアで、坂道と階段の写真ばかりを撮っていました。
きつい坂を見つける度に、またその坂を登る人を見る度に、カメラを向けていたのです。
少し苦しいことのあった過去の自分を思い出していたのかもしれません。
あるいは、運不運に左右されない力強い人間の歩みをそこに見ようとしたのかもしれません。
いずれにしろ、坂や階段とだぶらせていたのは、ボクらのこの「life」「la vie」というものでした。

この「坂道 Les Pentes」に登場するのは、
一人の無名の画家の人生です。
難しい表現も、気取った言い回しもありません。
本当にシンプルに、ある画家の人生を飾らずに淡々と表記しただけです。
しかし、今のボクにとっては一番大切な言葉が、ここには登場します。

ほとんど坂道と階段ばかりの写真集ですが、光が鮮やかです。
また、朗読の背景となる音楽は透明で、素晴らしいです。
音楽監督は「叫ぶ詩人の会」のコンポーザー、きりばやしひろき。
ギタリストに、アルルカンのピクルス田村。

英語への翻訳、朗読は、
ニューヨーク時代のバンド「アンド・サン・スー・チー」のベーシスト、Geoff Hash
フランス語への翻訳、朗読は、
アテネ・フランセで一番やさしかった鴨川のイケメン、Ivan Grandeclément です。

誰もの人生が、坂や階段の連続なのかもしれません。
でも、登り切れない「Les Pentes」はない。
周囲に目をやれば、味わい深い光景が広がっています。

表紙の一番大きな写真は、マルセイユの一番高い丘から地中海を見下ろしたところ。
サン・テグジュペリが散った海です。

「坂道 Les Pentes」(ポニーキャニオン)
5月25日の発売予定です。(Amazonなどでの予約は始まっています)
http://news.ponycanyon.co.jp/2016/03/13135

関西弁vs東北弁

ランボー表紙_convert_20160327230824

4月22日の「ぎょぎょ! 土地ことばが詩になるの?」
ぎょぎょ! お客さんの予約がほとんど入ってないぞ!

というわけで、少し宣伝させて下さい。
この日は、桐生生まれで東北弁修行中の詩人、新井高子さんと
「土地ことばって何だろう?」をテーマに作品朗読とトークをします。

ボクは少年時代にひたった関西弁(神戸弁?)で、
なにかみずみずしいものができればと思っています。
絶対やろうと思っているのが、
1)関西ヤクザが詩人だったら/抗争編
2)アルチュール・ランボーの長編詩「Le Bateau Ivre(酔いどれ船)」の関西弁訳
などです。

ちなみに、ランボーの短い作品もこんなふうになります。

Sensation

Par les soirs bleus d’été, j’irai dans les sentiers,
Picoté par les blés, fouler l’herbe menue :
Rêveur, j’en sentirai la fraîcheur à mes pieds.
Je laisserai le vent baigner ma tête nue.

Je ne parlerai pas, je ne penserai rien :
Mais l’amour infini me montera dans l’âme,
Et j’irai loin, bien loin, comme un bohémien,
Par la Nature, –– heureus comme avec une femme.


感じるねん

夏の蒼い夕暮れは、ボク、あぜ道を歩くねん。
細かな草を踏むやろう。麦がちくちくちくちくしよんねん。
夢見るようや。一歩ずつ、みずみずしい感じやん。
すっぽんぽんのボクの頭、風にさらしたままでな。

なんも話さへん。なんも考えへん。
そやけど、無限の愛がボクの胸に湧きあがるねん。
遠くへ、ものごっつう遠くへ行ったろう。
さすらいさんみたいに。
本能に導かれて−−−ボク、しあわせや。おんなとおるみたいに。


4月22日(金)午後7時より
青山スパイラルビル9Fのスパイラルルームです。
(東京都港区南青山5-6-23)

予約:info@oblaat.jp

少年時代につかっていた言語と、
その頃につちかった感覚との間には、不可分な関係があるような気がします。
ボクたちは標準語だけではなく、もっと豊富な言語の森から
「Sensation」の鮮やかな蝶たちを飛ばしてもいいのかもしれません。
プロフィール
作家・歌手・明治学院大学国際学部教授

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

ライブ・公演情報
2021年12月
24日&25日
『新宿の猫』
菊川なぁ〜じゅ
近刊
「水辺のブッダ」(小学館)
「新宿の猫」(ポプラ社)
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