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「あなたという国」

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新刊「あなたという国 ニューヨーク・サン・ソウル」(新潮社)の見本が届きました。
摩天楼の窓、灯りの一つずつに一人一人の物語が隠れている。
そのイメージを温かいタッチで描いて下さったのは網中いづるさん。
装丁は緒方修一さんです。
今月29日発売です。

2001年9月11日の同時多発テロで亡くなった一人一人への追悼を通じ、
混迷深まる現在の世界へ問いかける一冊です。

また、この刊行を記念し、一人でトークライブをやります。
「あなたという国 ニューヨーク・サン・ソウル」刊行記念
トークライブ「詩と愛とニューヨーク」
2月1日(月曜日)午後7時より 新潮社横の「ラカグ」にて。
予約制ですので、お早めにどうぞ。

http://peatix.com/event/138008/

2月3月はかなりの数の講演やイベントがあります。
別枠でまとめますね。

講演、イベントたくさんあります!

講演やイベント出演が多くなってきたので、3月分までまとめておきます。
お、この日はあいてる! というイベントがあれば、どうぞいらして下さい。

1月24日(日曜日)
飛鳥を翔た女性たち〜「朱花の月」上映と河瀨直美講演会(主催/奈良県橿原市)
場所 イイノホール(東京都千代田区内幸町2-1-1)
開場13時 開演13時30分
河瀨直美監督と対談します。
https://www.kashihara-kanko.or.jp/oshirase/20150124.html
 
1月31日(日曜日)
ハンセン病文学ビブリオバトル(主催/日本財団)
場所 六本木多目的スペースumu(東京都港区六本木6-9-1)
開場12時 開演13時
書評をするバトラー以外に、ゲストとしてボクと中江有里さん、
また、快復者として森元美代治さんが参加します。
http://www.tv-asahi.co.jp/umu/

2月1日(月) 
「あなたという国 ニューヨーク・サン・ソウル」刊行記念
朗読ライブ「詩と愛とニューヨーク」
場所 新潮社横「ラカグ」(東京都新宿区矢来町67)
開演 19時
自身の詩だけではなく、ニューヨークに関連した詩人たちの作品も幾つか発表できればと思っています。
予約制ですので、興味がある方はお早めにどうぞ。

http://peatix.com/event/138008/

2月20日(土)
金井真紀さん新刊記念 
金井真紀×ドリアン助川「新宿は今も昔も文学の街なのか?」
『酒場學校の日々 フムフム・ぐびぐび・たまに文學』(皓星社)刊行記念トークライブ
(主催/本屋B&B)
場所 本屋B&B 東京都世田谷区北沢2-12-4 2F
開場 18時30分 開演 19時
http://bookandbeer.com/event/20160220_bt/


(以降は詳細が出次第、発表します)
2月24日(水) 
ピースボートにて講演 今夏はピースボートにて台湾のハンセン病療養所「楽生園」を訪れます。

2月27日(土) 
淡路島にて映画「じんじん」上映、「クロコダイルとイルカ」について講演

2月28日(日) 
淡路島にて映画「あん」上映、講演

2月29日(月) 
日本生産性本部にて講演 (これはクローズな場かもしれません)

3月2日(水) 
横浜市 栄公会堂 「あん」についての講演

3月4日(金)  
日本アカデミー賞 希林さんをエスコートします。(日本テレビ中継)

3月12日(土) 
札幌にて映画「あん」上映、講演

3月18日(金) 
都留文科大学 映画「あん」上映、講演 (これは学生のみ対象かもしれません)

3月19日(土) 
所沢 ぴあフィルムフェスティバル 映画「あん」上映、講演

3月21日(祝) 
大宮ソニックシティ 人権についての講演

3月27日(日) 
三宅島にて映画「あん」上映、希林さんと講演

義援金からお店屋さん誕生!

みなさんのお気持ちから、とても可愛いお店屋さんが誕生します!

昨年9月、茨城県常総市の水害に際し、
売れ残っていたアルルカンのCDを買っていただくという形で
全額寄付にご協力いただいた皆さん、
本当にありがとうございました。

常総市の車椅子の行政書士、古性隆さんへのエイドという形で
74万4712円を届けさせてもらったのですが、
古性さんは自分が使うわけにはいかないと判断されました。
そして、常総市と何回も話し合いの場を持たれ、
最終的には、こういう形でみなさんのお気持ちを昇華させてくれました。

古性さんのブログ
http://office-aoba01.seesaa.net/article/432805205.html

(ボクのファンではない方も多数ご協力して下さったと思うのですが、
古性さんは、「ドリアン助川さんのファンの皆様から」と書かれています。
すいません。今回だけファンということでお許しを)

洪水で流されてしまった保育園の遊具が、
古性さんの努力とみなさんのお力でよみがえります!

韓国版「あん」出ました。

韓国版「あん」_convert_20160120163256

韓国版「あん」、刊行されました。
ハングルはまったく読めないのですが、
表紙に、日本語で小さく「あん」と書かれています。

どら焼き屋さんと桜の構図。
でも、やはり風情として韓国風ですね。

来月の初旬にはフランスでも「あん」が出版されます。

それから今月29日には、
小説の上梓としては2年ぶり、
「あなたという国 ニューヨーク・サン・ソウル」(新潮社)が出版されます。
2001年のマンハッタンが舞台。
日韓の「ロメオとジュリエット」です。

過ぎし日を振り返りつつ(3)

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「黒く鳴く」

ホテルの前の街灯は 村じゃ一番の明かりもち
空が紫に沈む頃 虹はここから伸びていく
そのかすかな色彩のカーブに乗って
ひしめき合って飛んでくる コオロギ
触覚の先に魂をぶらさげた
草原の 地雷原の 星の際までの コオロギ

ブオーンと響く翅の音 ゴーンと響く寺の音

兵隊さんのジープも 国連のトラックも
ひび割れたプールも 無数のコオロギに覆われている
黒くうごめいて 黒く鳴いて
いかしたスープで膨らんで

小競り合いはいつものことさ 夜の数だけいがみ合う
バケツに水を入れて 手当たり次第 コオロギをつかんでは放り込む
争う必要はないほどたくさんいるのに 蹴られたり 肘鉄をかまされたり
コオロギと同じ姿勢で 地を這いながら 
ボクら

バケツで溺れるコオロギは もはや鳴くこともできず
黒くもがいて 黒く絶命して 黒く堆積する
あとは油で揚げるだけ 塩とトウガラシであっさりと
あるいはナンプラーにつけてもいい

あつあつのコオロギに齧り付いて
コオロギだけでお腹を膨らませて
ボクはランプの灯りを吹き消す
闇に戻れば お腹の中で
コオロギはまた黒く鳴き始める

いつかきっと母さんは帰ってくる
ボクは一匹のコオロギになり 母さんを捜しに、ホテルの灯りへと飛んでいく
追い掛けてくるのは誰?
ボクのことはつかまえないで
ボクが黒く鳴いているのは
母さんに気付いてもらうためなんだから

ブオーンと響く翅の音 もう鳴らない寺の音

過ぎし日を振り返りつつ(2)

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「商機」

父さん ポル・ポトが橋を爆破しました
退却しながらの攻撃というやつで、ダイナマイトが炸裂
橋の真ん中が吹き飛んで、もう誰も渡れやしません
棒高跳びの選手が棒を突いても、
サーカスのオートバイ乗りがエンジンをふかしても、これはもう無理というものです
父さん 商売をしましょう メコンを渡れない人がたくさんいます
ジープやトラックも護岸に溜まるばかり
ちょいと遠回りして、我らのトラクターで浅瀬を引っ張ってやりましょう
自転車やオートバイなら1ドル トラックなら10ドルはとれます
父さん メコンで商売をしましょう
困っている人がいるんだから 助けてあげないと

それにしても父さん 
橋は真ん中がなくなると橋ではなくなるのですね
では、ここからも大きく見えるあの橋、あの橋の残骸をなんと呼べばいいのでしょう
つまり父さん
なにかがなくなると、元の名前は消えてしまうのですね

それなら、道はなにがなくなると、道ではなくなるのですか
虹はなにがなくなると、虹ではなくなるのですか
人はなにがなくなると、人ではなくなるのですか

父さん メコンで商売なんてこれまで考えたこともなかった
そんなことを思いついたのは
なにかを得たのですか それともなにかをなくしたのですか

橋が橋ではなくなった今 ボクもボクではなくなりました
父さん さあ メコンで商売をしましょう


過ぎし日を振り返りつつ(1)

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日を追うごとにきな臭くなっていく世界。
好戦的になっていくこの国の内閣。
このまま、非戦を誓った憲法はなし崩し的に壊されてしまうのだろうか。

二十代から三十代にかけて、
ボクは内戦の傷痕が残る地域を歩いた。
それをステージで語るようになったのが「叫ぶ詩人の会」の始まりでもあったのだが・・・。

もう一度あの頃の気持ちに戻るためにも、
武器が武器を呼んだ世界のワンシーンを言葉と写真でいくつかお伝えしたい。


「うろこマーケット」 

うろこマーケットはうろこばかり
生きてる魚を刃物でこすり あちらこちらにうろこを飛ばす
一匹の魚から千枚のうろこ 千匹の魚から百万枚のうろこ 百万匹の魚から十億枚のうろこ
誰も掃除なんてしないから うろこマーケットはうろこばかり

口紅忘れたマーケット
大きなかごをかつぐのも ナマズの頭を落とすのも うろこの中で眠るのも
みんなみんな女ばかり うろこマーケットは女ばかり 男はもう残っちゃいないから

赤いスカートのナマズ売り 旦那は草のつゆになり
青い帽子の鯉売りは 家族残らず空になり
白いズックのうろこ引き 恋人散った 雲の果て

みんなみんな女ばかり うろこマーケットは女ばかり 
誰も化粧なんてしないけど

一人の男と一人の女が出会って 三人の子供が生まれる
三人の男と三人の女が出会って 九人の子供が生まれる
九人の男と九人の女が出会って 二十七人の子供が生まれる

でも、男はいないんだ みんな虹の向うに隠れちまった うろこのように飛び散った

うろこマーケットはうろこばかり 誰も化粧なんてしないんだ
口紅忘れたマーケット うろこばかりのマーケット

あけましておめでとうございます。

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みなさん、あけましておめでとうございます。
2016の太陽が多摩川の向うに昇りました。
創作者として、本年はいっそうに励む覚悟です。
ぜひ、作品に触れて下さい。
プロフィール
作家・歌手・明治学院大学国際学部教授

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

近刊
「寂しさから290円儲ける方法」(産業編集センター)
(2023年5月23日刊行予定)
「動物哲学物語」(集英社)
(2023年10月26日刊行予定)
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