パリ

フランス落書き_convert_20151116180147


愛知と三重での講演、そして大阪・堺でのライブから帰ってきました。今ようやく仕事場に戻り、この二日間考えていたことを記せます。

人類は、人類という難題を抱えて込んでしまいましたね。
ボクは2001年にマンハッタンで暮らしていたので、9月11日のテロは目の前で体験しています。
あの時、ある国とある国が戦う、そして終戦が来れば和平協定を結ぶといった従来の戦争(たとえば太平洋戦争)と平和の時代は終わり、テロと報復の終わりなき連鎖を遺伝子のように宿し、ネットを通じて憎悪を電送できる場所ならどこでも戦場にしてしまう・・・そうした人類の時代が来たのかもしれないと、呆然としていた記憶があります。

それが今、現実に起きています。
シリアの過激派を殺戮すればテロの時代は終わるのか。
だから、そうは思えないのです。
人類の在り方が変わらない以上、これは永々と続くでしょう。

では、どうすればいいのか。
ボクは思います。
人類が人類という難題を抱え込んでしまったのなら、
人類はもう一度、人類を取り戻さなければいけないのではないか。

それは決しておおげさなことではなく、
身の回りについての心の在り方です。
ボクのような立場の者であれば、
人類をもう一度信じて詩や物語を書くことであり、歌うことです。

リヨンの街角で見つけた落書きに、
ただ一行、こういうのがありました。

Je t'aime.(ボクは君を愛している)

これです。
家族や、友達や、たとえばネットで知り合った人々、
自分の気持ちを伝えられる小さな人類の輪に、
「Je t'aime」という思いで臨むことだと思うのです。

政治の世界には実行力で解決していかなければいけないこともあるでしょう。
それぞれの立場で具体性は違ってくる。
でも、基本として失ってはいけないものがあるのではないか。

来年1月、あるいは2月に、小説「あん」のフランス語版が出ます。
パリの出版社から販売促進のために来て下さいと言われていました。
どうしようかと迷っていましたが、
このテロの状況を見て、逆に、パリに滞在することを強く望んでいる自分がいます。

どれくらいの読者が生まれるのかボクにはわかりません。
それでも、こんな時だからこそ、「あん」を読んでもらいたいのです。
それがボクの「Je t'aime」だからです。

昨夜のライブで、ラスト曲の「恋歌」を歌う前に、
この話を少ししました。
不覚にも涙が止まらなくなり、少々涙声の「恋歌」になりました。
犠牲になられた皆さんへの気持ちや、
自分の及ぶ範囲で「人類を取り戻す」という想いが混じり合い、
唐突な涙になったのです。

今月末にはカタールに行ってきます。
映画「あん」を観たいという人たちがアラブの国にもいるから。

Je t'aime!
プロフィール

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

ライブ・公演情報
11月4日(土)5日(日)
「星の王子様と道化師の惑星」
Eggman Tokyo East
YEN TOWN FOOLsとの合同公演です。
近刊
「星の王子さま」(皓星社)
「バカボンのパパと読む老子」(角川文庫)
「バカボンのパパと読む老子 実践編」(角川文庫)
「海の子」(ポプラ文庫)
「ピンザの島」(ポプラ文庫)
「坂道 〜Les Pentes〜」(ポニーキャニオン)
「あなたという国 ニューヨーク・サン・ソウル」(新潮社)
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