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歴史的瞬間に立ち合った

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カタール行く直前に、地軸がずれ動いたんじゃないかと思うくらいの
ものすごいものを観て(体験して)しまったので報告します。

鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団の新作公演「無限」。
音楽監督とヴォーカルをつとめた中島千絵さん(写真中央)にご招待いただき、
日本橋劇場にうかがいました。

ボクは学生時代、新宿のフラメンコ居酒屋「nana」でバイトしていたこともあり、
流れでエル・フラメンコにもよく通いました。
まったくの専門外ですが、
スペインからの舞踊団も含め、相当数観ている方です。
それゆえに、フラメンコが持つ徹底的な形式美について
その不自由さと、不自由であるからこそ到達可能な悲哀という
黄金律にも似たバランスのなかで固定観念ができあがってしまっていたのです。

フラメンコは形式から逃れられない。
逃れちまったらもうフラメンコじゃない。
そのくらいの思いです。

ところが今日は、正面からはっ倒され、後方に百回くらい転がされた感じがあります。
見事に一度フラメンコを解体し、
その緊密な再構成のなかに人間の持てる力をありったけ注ぎ込んだ新次元の舞踊。
つまりこれは一種の人間意識の解体であり、等しく懐胎でした。

ものすごいよ!
歴史が今日動いたんだもの。
それを目撃できたんだもの。

人類は、人類という難題を抱え込んだ。
ならば、ボクらは人類を取り戻さなければならない。
パリのテロのあと、そんな意味のことを書きました。
それがもう始まっている。
世界のどこに出してもエンドレスの拍手間違いなしのパフォーマンスの誕生です。
今日の観客席も、心からの拍手が大きなウエーブになっていつまでも続きました。

この人たちは最初から世界を視野に入れている。
もとの地平が全然違うところにある。
あの圧巻の群舞、歌、音楽! そう思わざるを得ません。

ついに、こんなものが誕生してしまった!
今日は新作公演としての楽日でしたが、きっと再演があるでしょう。
こちらに情報が入ってきたらお伝えしますね。
それにしても、人類はすごい!

これは文字通りinfinitoな連続公演になるかも。

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アルルカン・ヴォイス・シアターとしての今年最後のライブのお知らせです。
「叫ぶ詩人から歌う道化師まで」と題し、
この二十余年の楽曲から「あん」までを辿ります。
ギタリストはピクルス田村。
スペシャルゲストは「弾く米国人」
ニューヨークで結成したアンド・サン・スー・チーのベーシスト
Geoff Hash です。

12月20日(日曜日)
Eggman Tokyo East
(http://www.egg-mte.com/index.html)

東京都千代田区岩本町2-6-12 B1
03-5829-6400
open 18:00 start 18:30
前売3090 当日3600  (プラス1ドリンク520)

申し込み info@egg-mte.com あるいは電話で。

写真は今月15日の大阪堺、ぎゃらりいホンダさんでのライブの様子です。
ちなみにボクは明日から映画「あん」の上映があるドーハの映画祭に行ってきます。
カタールに入国するのは初めて。
希林さんや永瀬さんもいっしょです。

縁あって帯コピー

学校カバー_convert_20151125123553

ものすごくおもしろく、味わい深い本を紹介します。
詩人であり、酒聖であった草野心平さんが開かれた「酒場學校」。
カウンターだけで、椅子は6つだったかな?
まぎれもなく新宿ゴールデン街のひとつのオアシスであったこの酒場は、
ドアを開けると心平さんの笑顔の写真と、
上品でやわらかな禮子ママの微笑みが並んでボクらを迎え入れてくれました。

禮子ママの年齢もあり、この「酒場學校」が閉校したのは二年前です。
でも、アルバイトで週一ママをつとめていた金井真紀さんが
とてつもなく滋養に満ちた本として、
このバーの扉をあらたに開けてくれました。

中身は、學校に通い詰めたみなさんの言行録。
心平さんと禮子ママの人生。
昭和の記憶。
詩。
そしてたぐいまれな観察眼とユーモアを持ちあわせた金井真紀さんの
満月のような心そのものです。

縁あって帯カバーの言葉を書かせてもらいましたが、
裏面にはこうあります。

「ページをひらくと、いい夜がやってきます。
さあ、ここに座って、読んで飲みなよ」

酒場好き、本好きにとっては必携の一冊。
文章のおもしろさに加え、真紀さんのイラストがあたたかです。

永瀬正敏 写真展

永瀬さん写真展_convert_20151119210919

永瀬正敏さんの写真展に行ってきたよ。
銀座のLeica(ライカ)で来年2月14日まで。
(中央区銀座6−4−1 tel03-5221-9501)

fragment 〜断片 というタイトル。
この春の南仏がテーマということで、
カンヌ映画祭をきっかけに逗留され、
撮影されたのだと思います。

カンヌの旧市街とか、
ボクも同じ場所から撮っている写真がずいぶんとあるのに、
なんだろう、このクオリティの違いは。
特に象徴的なものが入り込んだときの永瀬さんの写真は強い。
きりっとして、空気が伝わってきます。

お爺さんは写真家だったという永瀬さん。
そのDNAが間違いなく永瀬さんの視線の起点にあるんだなあと思いました。

銀座にお出かけの方はちらりとLeicaを覗かれてみてはいかが。

晩秋のイベント

『お召し列車』東京オモテ_convert_20151119125608

今日は晩秋の美しき空が広がっていますね。
イベント関連で、お伝えしたいことが幾つかあります。

まずは劇団「燐光群」の新作「お召し列車」。
ハンセン病の元患者の人生が背景となるこの舞台、
11月27日(金)〜12月6日(日)まで、座・高円寺1です。
渡辺美佐子さん主演、カンヌ女優の大島葉子さんも出演します。
ボクは12月5日夜の部の終演後、座長の坂手洋二さんとアフタートークをやります。
燐光群 03-3426-6294 http://rinkogun.com

もうひとつ。
日本財団が興味深いことを始めました。
日本のハンセン病文学を一同に集めてネット上の書棚をつくってしまったのです。
「あん」も紹介されています。もし良かったら利用されて下さい。
ハンセン病患者が経てきた壮絶な歴史と、しかし決して失われなかった人としての表現、文字を綴る行為。
ここから見えてくる「人間」は、今日の空のように光に満ちています。

http://booklog.jp/users/thinknow
https://www.facebook.com/NipponZaidan/

パリ

フランス落書き_convert_20151116180147


愛知と三重での講演、そして大阪・堺でのライブから帰ってきました。今ようやく仕事場に戻り、この二日間考えていたことを記せます。

人類は、人類という難題を抱えて込んでしまいましたね。
ボクは2001年にマンハッタンで暮らしていたので、9月11日のテロは目の前で体験しています。
あの時、ある国とある国が戦う、そして終戦が来れば和平協定を結ぶといった従来の戦争(たとえば太平洋戦争)と平和の時代は終わり、テロと報復の終わりなき連鎖を遺伝子のように宿し、ネットを通じて憎悪を電送できる場所ならどこでも戦場にしてしまう・・・そうした人類の時代が来たのかもしれないと、呆然としていた記憶があります。

それが今、現実に起きています。
シリアの過激派を殺戮すればテロの時代は終わるのか。
だから、そうは思えないのです。
人類の在り方が変わらない以上、これは永々と続くでしょう。

では、どうすればいいのか。
ボクは思います。
人類が人類という難題を抱え込んでしまったのなら、
人類はもう一度、人類を取り戻さなければいけないのではないか。

それは決しておおげさなことではなく、
身の回りについての心の在り方です。
ボクのような立場の者であれば、
人類をもう一度信じて詩や物語を書くことであり、歌うことです。

リヨンの街角で見つけた落書きに、
ただ一行、こういうのがありました。

Je t'aime.(ボクは君を愛している)

これです。
家族や、友達や、たとえばネットで知り合った人々、
自分の気持ちを伝えられる小さな人類の輪に、
「Je t'aime」という思いで臨むことだと思うのです。

政治の世界には実行力で解決していかなければいけないこともあるでしょう。
それぞれの立場で具体性は違ってくる。
でも、基本として失ってはいけないものがあるのではないか。

来年1月、あるいは2月に、小説「あん」のフランス語版が出ます。
パリの出版社から販売促進のために来て下さいと言われていました。
どうしようかと迷っていましたが、
このテロの状況を見て、逆に、パリに滞在することを強く望んでいる自分がいます。

どれくらいの読者が生まれるのかボクにはわかりません。
それでも、こんな時だからこそ、「あん」を読んでもらいたいのです。
それがボクの「Je t'aime」だからです。

昨夜のライブで、ラスト曲の「恋歌」を歌う前に、
この話を少ししました。
不覚にも涙が止まらなくなり、少々涙声の「恋歌」になりました。
犠牲になられた皆さんへの気持ちや、
自分の及ぶ範囲で「人類を取り戻す」という想いが混じり合い、
唐突な涙になったのです。

今月末にはカタールに行ってきます。
映画「あん」を観たいという人たちがアラブの国にもいるから。

Je t'aime!

プロの医者ってのはすごいもんだ!

今、12日の午後9時です。
このあと午後10時から、NHK総合放送の「総合診療医ドクターG」に出るよ。今夜は右の手足が不自由になってしまった人の病症を探るよ!

おいしいは幸せ!

叫ぶ詩人の会の後期マネージャーだった前坂美穂さんが、脳梗塞で倒れて2年になります。そして今日は彼女のお誕生日。

前坂さん、左半身が不自由な状態が続いているため、リハビリに励みつつ、介護と食事付きのレジデンスに転居されました。そして始めたブログが「おいしいは幸せ! バリアフリーアパートテイクアップ館での生活」(blog.livedoor.jp/takeup_qchang/)

もともと文才がある人なので、惹き付ける記事が続きます。読者が増えると、彼女も書き甲斐があると思います。もし良かったら、「おいしいは幸せ!」を覗いてみて下さい。

今年の関西でのライブはここだけ!

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つちびと作家、可南さんの個展会場を訪れ、
アルルカンのライブをやります。
ご覧のつちびと道化師は、もちろん可南さんの作。
我がアトリエの神様のひとりです。

今回のライブは、叫ぶ詩人の会からの曲も含め、
新旧とりまぜてお届けしようと思います。
(ハタ坊のおでん、やっちゃいます)
終演後はそのままパーティとなります。

11月15日(日) 開場 午後5時30分 開演 午後6時
会場 ぎゃらりいホンダ 大阪府堺市中区深井沢町3134
入場料 3500円 要予約です。電話してね。
電話 072-278-3381
メール honkan0811@yahoo.co.jp

会津のみなさん、ありがとう。

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 映画館のない会津の中学生に映画を観てもらおう。そんな気持ちで会津の大人のみなさんが始めたプロジェクトがあります。それは、各中学校での年一回の上映会。今年選ばれた作品は「あん」です。

 樹木希林さん、永瀬正敏さんとともに計5校の上映会に参加してきました。どこに行っても大歓待を受け、喜んでいただきました。でも、本当にたくさんのものをいただいたのはボクらの方かもしれません。真摯なまなざしでスクリーンを観る中学生たち。その光景がそのまま琴線に触れるのです。

 会津のみなさん、ありがとうございました。「あん」を書いて良かった。心の底からそう思いました。
プロフィール
作家・歌手・明治学院大学国際学部教授

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

近刊
「寂しさから290円儲ける方法」(産業編集センター)
(2023年5月23日刊行予定)
「動物哲学物語」(集英社)
(2023年10月26日刊行予定)
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