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ウクライナの街で

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こうして、あっという間に映画祭の四日間は過ぎていきました。
希林さんと良く飲み、良く笑いました。
これは、希林さんが気を遣われて
撮って下さった写真。

オデッサの通りには彫像がけっこう並んでいます。
優雅な青年と手を取り合い、
歴史の交差点とも言えるこの地に吹く
そよ風を受けているところです。

しかしそれにしても・・・
「あん」という物語を書いている時は、
映画化されたらいいなあ、ぐらいには思っていましたが、
まさか、ウクライナにまで連れていってもらえるとは!

物語の力は偉大です。
なんらかのかたちで言語を越える作品とつながり合った時、
こんなふうに広がっていくものなのですね。

「あん」が世界各地で根を張り始めた。
そんな実感を胸に、
さあ、希林さん、もう少し飲んでから帰りましょう。

ウクライナ、紛争が終われば、
とてもいいところですね。
また来たくなる場所です。

ですから、お金を円に戻すことはやめ、
次回の旅のために取っておきましょう。


映画は国境を越える!

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希林さんを囲む人の輪が続きます。
口のなかまで涙が流れた、と話す女性たち。
俺は、不器用そうな青年から放たれたひとこと、
「心のトレーニングになりました」という言葉に、
胸震える思いがしました。

「あん」は、
主に東村山を舞台に撮影された低予算の映画です。
それが、渡航危険勧告が出ているウクライナの街で、
こんなふうに受け入れてもらえるなんて。

どんな強力な戦車よりも、
物語や映画は国境を越えて、
いえ、受け手の心のなかにまで入っていきます。



希林さん、女の子たちにもてる!

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映画「あん」の上映後、
カンヌ映画祭でも体験したあの拍手が待っていてくれました。
会場から出ていく希林さんと俺を、
左右に壁をつくるようにして、
ウクライナの人々が拍手で送ってくれます。

人前ではめったに泣かないのがウクライナの男たちなのだとか。
あんなにたくさんの男たちが泣いているのを初めて見たと、
コンスタンチンくん。

女性たちは、希林さんのファンになったようです。
すぐに人が集まり始め、
エンドレスの撮影会となりました。

希林さん、さらにごきげん!

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これがオデッサ国際映画祭の会場です。
希林さん、なにを見ても嬉しそう。
弾けています。

希林さん、ごあいさつ。

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公式会見、および、上映直前での会場に向けてのスピーチ。

希林さん
「ここに来ると言ったら、
おそろしい国だから行くなと周囲から止められました。
でも、日本は地震はあるし、
火山は噴火するし、
その状況で勝手に原発を再稼動させるし、
もっとおそろしい国です。
呼んでいただいて、ありがとう」

場内爆笑となり、ああ、希林さんは世界中から愛される人なのだなと、
横で見ていて実感しました。

公式会見

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フェスティバル終了日、
映画上映に臨んでの公式会見です。

俺は、「あん」を書こうと思った経緯、
映画化に向けて監督と希林さんに手紙を送ったことなどを話しました。
けっこう真面目に。

一方、希林さんは・・・

オデッサという街

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オデッサは、「戦艦ポチョムキン」の舞台となった街です。
ロシア中から観光客が集まってくる街でもあります。
そして昨年は、内戦にも似た紛争のなかで多くの犠牲者を出した街。

でも、行ってみなければわかりません。
この夏は本来の穏やかさを取り戻したようで、
街は光にあふれ、
人々の表情にも笑みがあふれていました。
人心が急速に回復しつつある、という印象を受けました。

希林さんの背後はオペラハウス。
結婚式の写真をここで撮るのが流儀となっているようで、
周囲には7組もの新婚さんがいました。

希林さん、ごきげん。

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オデッサ到着の翌日は、黒海にクルーザーで乗り出し、
海から街を観るという趣向のおもてなし。
ウオトカを一杯やったあと、
希林さんはデッキのベッドでご覧の通り。

気持ちいいねえ。
最高だねえ。
幸せだねえ。
来て良かったねえ。

と、ごきげんでした。

俺は、ウオトカを飲み過ぎました。

通訳くんと案内係さん

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オデッサにいる間、ずっと支えてもらった通訳くんと案内係さんです。
通訳くんは、コンスタンチンくんといい、大阪の外大に留学していました。
「ふつうにムカデがいる部屋が、オオサカですね」
と、ちょっと変わった印象が大阪にあるようです。
でも、彼の日本語は完璧。
まったくわからないロシア語と、時々こんがらがる英語をすべて横で訳してくれました。
頼もしいコンスタンチンくんでした。

案内係は、ナディアさんといいます。
ウクライナは美女が多い国だと言われますが、
まさかここまで、というぐらい、
「ふつうに美女がいる通りが、オデッサですね」という印象になります。
ナディアさんは気配り美人でもあり、
希林さんのちょっと暴走ぎみの言動にもやわらかに対応してくれました。
ワインをこぼした瞬間に、ティッシュを差し出してくれるナディアさん。
控えめな物腰ですが、専攻はギリシャ文学。
ギリシャ語ならまかせて下さい、とのことです。

黒海までやってきた!

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ウクライナのオデッサ国際映画祭にやってきました。
映画「あん」(河瀨直美監督作品)が、フェスティバルの
クロージング・フィルムに選ばれたからです。

クリミア半島がロシアのものになり、
東部ではいまだ戦闘状態とあって、
「やめておいた方がいいですよ」と
周囲からも危険勧告があった土地での映画祭です。

ところが、「そんな場所だから行ってあげたいのよ」という希林さんのひとことがあり、
原作者はボディーガードとして一緒に旅立つことになりました。
希林さんと二人だけのウクライナ旅行です。

トルコのイスタンブールまで成田から12時間。
そこで2時間ほど待って、オデッサまで1時間と少し。
街灯がまばらで、真っ暗な街という印象でした。
でも、翌朝になってみればご覧の通り。

黒海の輝きを受け、徳江さん、まばゆい笑顔です。
プロフィール
作家・歌手・明治学院大学国際学部教授

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

ライブ・公演情報
2021年12月
24日&25日
『新宿の猫』
菊川なぁ〜じゅ
近刊
「水辺のブッダ」(小学館)
「新宿の猫」(ポプラ社)
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