一冊書き上げた!

金曜日、俺は仕事がうんとたまっているのにジュリエット・グレコに会いに行った。舞台に彼女が登場した時、本当に鳥肌が立った。87歳の歌声。声は掠れていたが、お腹からきちんと力強く出ていた。敬服した。その生き方に感謝した。
土曜日、俺は締切を二つ抱えているのに、憧れのトランペッター、近藤等則さんに会いに行った。ペットから火花が出ていた。俺は生まれて初めて、ラッパを吹いている老子を見た。聴いた。感じた。近藤等則さんは地球という生命と同化しながらバイブレーションの祭りをやっている。いや、近藤さんはその唯一無二の手法をもって、地球を励ましているのだ。言葉がなにも出て来ず、靖国通りを長い距離歩いた。世の中には凄い魂がある。
日曜日、俺は今日こそ仕事をしなければいけなかった。絶対しなければいけなかった。なのに気付いたら、日大フェニックスと早大ビッグベアーズの闘いの場にいた。二時間に及ぶ死闘をまばたきもせずに見ていた。日大の選手は命懸けでぶつかってくる。早大も真摯ではあるが、どこかちぐはぐだ。それが試合の結果になった。でも、素晴らしいものを見せてもらった。この競技を高校卒業とともにやめてしまった俺のなかの未練が、若い人々への嫉妬という形で燃え上がる。
ああ、だからずっと机に向かっているのだ。
今はこうしなければ、どこかに飛んでいってしまいそうだ。
そして今朝方・・・本一冊分の原稿を編集者に送った。
まだ小説の短篇が残っているが、これは心のなかで歌いながら書く。
いや、いろいろとまだ序盤戦だ。