あけましておめでとうございます。

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みなさん、あけましておめでとうございます。
2018年、1月1日、午前7時、多摩川の初日の出です。
この暁光が、みなさんとボクの僥倖にもつながりますように。
一日一日、生きている感じで生きていきたいと思います。

東北おんば訳 石川啄木のうた

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やや長きキスを交して別れ来し
深夜の街の
遠き火事かな (啄木)

とっぐりど 唇(くぢびる)合ァせで別(わが)れで来たぁ
夜中の街(まぢ)の
遠い火事(かず)みでァだなぁ (おんば訳)


はたらけど
はたらけど猶わが生活楽にならざり
ぢつと手を見る (啄木)

稼せぇでも
稼せぇでも なんぼ稼せぇでも楽(らぐ)になんねァ
じィっと 手っこ見っぺ (おんば訳)


ある朝のかなしき夢のさめぎはに
鼻に入り来し
味噌を煮る香よ (啄木)

ある朝ま 嫌(や)んた夢見だ起ぎがげに
鼻さ入ァつた、
味噌汁(おづげ)のにおいっこ (おんば訳)

昨年いっしょに朗読会をやっていただいた詩人の新井高子さんが
『東北おんば訳 石川啄木のうた』(未来社)を編まれました。
新井さんは震災をきっかけに、詩にもなにかできないかと考え、
岩手県大船渡市の仮設住宅集会室や総合福祉センターを会場に
地元のみなさんと啄木訳のプロジェクトを立ち上げます。
そして計9回の催しを経て、啄木の歌百首のおんば訳を仕上げます。

大船渡で「おんば」と呼ばれる高齢の女性たちが、土地の言葉とリズムで表した啄木の世界。

思うにボクらは、この一人の魂でさえ、ミルフィーユのように無数に重なり合う幽かな意識の連合体です。文字を選び、並べ、表わすという行為は、そこにひとつの輪郭をこしらえる作業です。
くっきりとしている。鮮やかです。だから伝えることもできるのですが、文字は行間の海から飛び出した氷山のようなもので、書かれていない気配にこそ、秘められた息吹があるものです。

ハンセン病のことを勉強しても『あん』は書けませんでした。実際に元患者さんに会い、療養所に何度も足を運ぶことで、活字の背後に隠れていた気配がものを語り始めたのです。

同じことで、啄木の歌を知って、わかったような気分になっていた自分が、おんばたちの言葉とその肉感的なオノマトペに触れたことで、揺れ動く意識としての啄木、三陸の大津波の地へ旅をして涙を流した少年から始まる「果てなき彷徨」が、文字と文字の間の白い雲の間から湧いて出てくるのです。

啄木についての簡潔なエッセイも胸にしみます。穏やかなお正月にお似合いの一冊です。

金井真紀さんにまたやられた。

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また金井真紀さんに気持ち良くやられました。
出版界ではすでに話題沸騰なのでご存知の方も多いでしょうが、
パリで出会った引力を感じるおじさんたちに直撃インタビューを試みた
この「魅惑のおじさんコレクション」はつまり、
「おじさんの生き方コレクション」であり、「人間の価値観図鑑」でもあるのです。

一人一人のおじさんの生き方を読む度に、
人間社会の幅や奥行きなどはもとから決まっておらず、
すべては個人の想像力と実行力にかかっているのだ、ということがよーくわかってきます。
社会からのちょっとした逸脱に悲哀や焦燥を感じている人には
きっと力を与えてくれる本だと思います。

またこの本には別の効果もあります。
読み進めるうちに、いわゆるモンマルトル的なパリのイメージは遥か後方へとおしやられ、
旧植民地と不可分のパリ、移民うずまくパリ、シリアやイラクからの難民を抱えたパリ、
テロが複数回起きているパリ、極右政党の支持者が増えつつあるパリ、といったふうに、
世界が直面している問題が凝縮した街としてのパリ、そこでおじさんたちが何を考え、どう行動しようとしているのか、それもまた真紀さんの柔らかな絵と文章から等身大で伝わってくるのです。

もちろん、世界は今だけではなく、いつの時代も問題に直面していました。
そのような意味では、ホロコーストの惨禍からただ一人生き残った少年(今は高齢のおじさん)の独白や、ボートピープルの妹さん夫婦を亡くしたベトナム人医師の語りなど、強く心を打つおじさんたちの言葉もあります。

しかし一番感じ入るのは、これだけの突撃取材を敢行した金井真紀さんと案内の広岡雄児さんの人間に対する熱意と敬意です。読んでいるうちに気付くのは、「ああ、自分もかつてはこんなふうに人を愛していたかもしれない」という記憶の向こうの手触りでした。その遠いところからの温もりを、少し回復できたような気にもなるのです。

「パリのすてきなおじさん」(柏書房)、すてきなエッセイストによる、すてきなすてきな本です。

明日は選挙ですが・・・

人に実りを与えるのは、大言壮語や意思表明ではない。
そんなものは天気のごとくころころと変わる。
その人がどの方角を向いて、日々どんな習慣を持つのか。
これにつきる。これこそが花や果実をもたらす土壌となる。

政治もまた同じ。
選挙前に政治家が口にする、降ってわいたような言葉はあまり意味を持たない。
どの方角を向いて、どんな習慣を持つのか。
政治家のそこを見て、判断しなければいけない。
では、政治家の習慣はどこに現れるのか。
それは、敵対する議員や記者に対する普段からのものの言い方である。

明日は天気が良くない。
それでも投票に行こう。それぞれが、それぞれの判断で一票を投じよう。

だんだん難しくなってきた。

サン=テグジュペリから母親へ宛てた手紙、だんだん難しくなってきた。
家族間の暗黙のことが代名詞で置き換わっていたりして。
あと、キリスト教の知識がないとお手上げですね。

4.           フリブール、ヴィラ=サン・ジャン 1917.5.18 金曜日
ぼくの大切なママへ

 素晴らしい天気です。昨日降ったのを除けば、ほとんど雨を見ることがないのですから!

 ボンヌヴィ婦人に会いました。フランソワ(弟)のことを教えてくれました。かわいそうな奴です。それからぼくはバカロレア(大学入学資格)に関して、すべてきちっと行っていると教えてくれました。ほっとしました。でも、ぼくの書類が送付されたかどうかを知るために、ママがパリまで手紙を書いてくれたのが無駄になってしまいましたね。ぼくはしっかりやったのだから、書類が到着したことをリヨンまで知らせておくべきでした。それを忘れてしまったのです。だけど、終わりよければすべてよしと言いますし・・・。

 昨日ぼくらは、シャルロと散歩に行きました。ぼくらが三人なので彼を入れて(3+1=4)ということです。
 パントコート(聖霊降臨の日)の週は、ルツェルンよりちょっと離れたところで、ぼくたちの年度末の瞑想会をやります。
 親愛なるママ、さよなら。心からのキスを。
                        あなたを敬愛する息子より
                              アントワーヌ


プロフィール

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

ライブ・公演情報
2018年1月28日(日)
朗読劇『あん』
早稲田大学大隈講堂
近刊
「星の王子さま」(皓星社)
「バカボンのパパと読む老子」(角川文庫)
「バカボンのパパと読む老子 実践編」(角川文庫)
「海の子」(ポプラ文庫)
「ピンザの島」(ポプラ文庫)
「坂道 〜Les Pentes〜」(ポニーキャニオン)
「あなたという国 ニューヨーク・サン・ソウル」(新潮社)
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