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新年の挨拶

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まるまる一週間遅れてしまいましたが、新しい年の挨拶をさせていただきます。

書き下ろしの原稿を抱えたまま卒論指導の苛烈な時期に入り、暮れも正月もまったくありませんでした。夢の中でもよくわからない学生の作文にアンダーラインを引いていて、さすがに笑ってしまいました。

ただ、そうした状況の中で、昨日茅ヶ崎で行われた開高健さんの文学フェスが盛況、成功裡にお開きとなり、気持ちの上でようやく2023年が始まりました。

写真の本は、ニューヨークで暮らしていた頃に翻訳を試みようと思い、5番街の書店で買ったものです。ベストセラーとなったポプラ社の『Good Luck』(田内志文さん訳)とは別の本で、幸運をつかむための世界中の儀式や呪文などが紹介されています。

残念なことに半分ほど訳したところで、日本ではこの本の抜粋が別タイトルで刊行されていることを知り、翻訳を断念したのですが、以降20年手元にあります。内容が面白いので、時々読み返しているのです。

そこで思うことですが・・・宝くじが当たるとか当たらないとか、そうした確率論的な幸運については、人はいっさい何もできません。でも、幸運はすぐ近くに、確実なものとしてあります。

それは、どのような状況においても、意味と意義を見つけることです。会社が潰れても、借金を背負っても、病気をしても、別れがあっても、そこに意味と意義を見つけることができる人は幸運の持ち主です。

何を書こうとしているのかよくわからない大量の原稿と向かい合い、元旦からオンラインで学生と面談する。これは普通なら避けたい状況かもしれません。しかし、そうした作業を通じて、ボクもまた学生から「現代」を教えてもらっています。なんと幸運なのだろうと思います。

2023年、みなさんにも安定した幸運が訪れますように。

高校の国語の教科書 掲載





高校教科書

新指導要領により、高校の国語教育の現場から文学や詩歌が失われる方向にあると聞き、数年前から「それは良くないのではありませんかキャンペーン」を文科省に対して行ってきました。

そうしたら、その新しくなった国語教育の教科書の一冊『新編 言語文化』(大修館書店版)の巻頭として、私の著書『プチ革命 言葉の森を育てよう』(岩波ジュニア新書)が収録されているではないですか。

喧嘩していた相手と初めて飲んだら、けっこう気があっちゃったみたいな、嬉しく、恥ずかしく、面はゆい感じです。この教科書自体は、むしろ文芸作品はてんこ盛りで、古文も漢文も含まれていて、眺めながら一升飲めるほど充実の一冊です。
共通テストの監督経験から言うと、むしろ今年の英語試験の変革の方がびっくりしちゃったかな。


卒業式

2021年度卒業式(祝勝)

3月19日、明治学院大学国際学部の卒業式が行われました。
助川ゼミの4年生たちも笑顔で巣立ちます。
一人一人が、味わい深い人生を創造できますように。
卒業、おめでとう。

ウクライナ情勢

希林さんウクライナ

平和とは、そんなに難しいものだろうか。
いったい、だれが難しくしているのだろう。

クリミア半島が併合されて、ウクライナ東部が戦闘状態になった時、ウクライナの国際映画祭に『あん』が招待されました。ボクたちは参加を止められましたが、希林さんから「そんな場所だからこそ、行ってあげたいのよね」と電話をもらいました。結局、映画『あん』を代表して、希林さんと二人で、イスタンブール経由でウクライナに入りました。

映画は翻訳されていて、でも、いざ対面になると、お互いに言葉はよくわからなかったけれど、『あん』を観たウクライナの人々が次々に希林さんに抱きついてきました。希林さんも、みんなを抱きしめていました。

人間はそれができるのに。
ボクたちは、本当は手を取り合えるはずなのに。

新春おめでとうございます。

見知らぬミニ

新春あけましておめでとうございます。
この新しい年もきっと、晴れたり曇ったり、雨が降ったり風が吹いたり、地面が揺れたり、
寝たり起きたり、ビールを飲んだり、野良猫と出会ったりするでしょう。

でも、どんな気分のときも、
唇に歌を、心に太陽を、耳には小鳥のさえずりを、目には銀河の輝きを。

絵は、『見知らぬ友』(マルセロ・ビルマヘール、宇野和美訳、福音館書店)のオーガフミヒロさんによる装画です。

何があっても、この不思議な少年のような感じで歩いて行きましょう。

プロフィール
作家・歌手・明治学院大学国際学部教授

ドリアン助川

Author:ドリアン助川
物語をつづり、詩をうたう道化師です。

近刊
「寂しさから290円儲ける方法」(産業編集センター)
(2023年5月23日刊行予定)
「動物哲学物語」(集英社)
(2023年10月26日刊行予定)
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